知識を基礎として、厳しい交渉に挑む。
調達はものづくりの知識はもちろん、コミュニケーション能力、交渉力が試される仕事である。調達グループで仕入先200社以上を任されているKは語る。「仕入先はものづくりのプロフェッショナルです。その部品を作るための材料や作り方、原価などの知識は私たちとは比べ物になりません。だからこそ、分からないことがあれば素直に聞き、現場に足を運び、自分の中に吸収していく。その積み重ねが調達としての基礎を築くんです。交渉がどんなに上手でも、一朝一夕には務まらない仕事ですね。」そして今、新型車種の開発プロジェクトが始まろうとしている。怒涛の2年間がスタートした。

信頼関係の先にある安定供給の実現。
調達は利益という数字で結果がはっきり出る仕事だ。トヨタ紡織精工では新型車種の開発プロジェクトは約2年。この期間にどれだけの利益を生み出せたのかが、調達としての腕の見せ所となる。Kはこう言って笑った。「大企業が安く買い叩く企業ドラマを見て勘違いされている方が多いのですが、調達は安く仕入れれば良いというわけではありません。なによりも優先すべきは持続的な安定供給です。仕入先の経営が苦しくなると別の仕入先が必要になり、簡単には見つかりません。その間は生産ラインもストップしてしまうので、当社にとって大変な損失です。だからこそ、ときには仕入先の思いをくみ取り、持ちつ持たれつの関係を継続しながら信頼関係を築くことが大切です。」

調達から利益を生み出し、
経営に貢献できるやりがい。
調達が交渉を行う仕入先とは、サプライヤーや物流企業だ。現在、物価上昇や後継者不足・人材不足の影響で厳しい状況に置かれている仕入先も多い。交渉には、ときには厳しい言葉が飛び交う。相手は自分よりも年配で、人生経験豊富な経営者たち。Kに交渉時の心境を聞いた。「もちろん緊張しますよ。相手は社員のみなさんの生活を背負って臨まれているし、こちらも譲れない場合が多い。上司と何度もすり合わせや準備をしながら、当社と仕入先の双方が納得できる妥協点を見つけていく。交渉の瞬間が調達の醍醐味でもありますね。当社の製品はシートなどの車室空間にあるものばかりなので、実はボデーは見ていません。だからこそ、街でその車種を見ると言葉にできないほど感動します。」
